ヲタク10年目

3日前、1つ歳を取った。

一度に2つ歳を取ることはないのに「1つ」ってつける表現を良しとするのはむず痒い感じがする。
精度がものすごいと噂の新潮社の校閲さんだったら赤が入って返ってきたりするんだろうか。

 

「歳を取る」もあるし、「歳を重ねる」もある。

「歳を取る」だけだと漠然としていてただの慣用句として処理してしまうけど、「歳を重ねる」とセットになった途端に何か意味を持つ気がする。

1年ごとに一枚ずつ紙の束を積み重ねていくようなイメージがある「重ねる」と対になる形で、「取る」は積み重なった年齢の束から一枚一枚取っていくイメージが浮かぶ。

だとしたら、取られていくほうの「歳」は寿命で、重ねられていくほうの「歳」は思い出か何かだ。

積み重なった2つの紙束の間に立って、左手の寿命の束から歳を取り、持ち替えて、それを右手の思い出の束に重ねる。

 

うわー、この話どうでもいい。


以上、ポエムでした。

 


誕生日前日は山中湖で大好きだったアイドルグループの解散ライブがあり、帰宅後、浴槽でこれまでの思い出に浸りながら日付を超えた。

 

ここ数年は誕生日がくるたびに、ヲタク◯年目かぁ、と思うようになった。今年で10年目になる。


大学1年のあたりだろうか、Perfumeが好きになり、そこからおそらく元から薄いほうだったと思われるアイドルやアイドルファンへの偏見も一層薄くなり、当時友人がひょんなことからアイドリング!!!にハマり始め、友人数人と録画したオススメの映像を一緒に見て「誰々がいい」などときゃっきゃして遊んだりしていた。

そんなこんなでアイドルを好きになる土壌はあったものの、19歳と364日目までの自分は自分がアイドルファンであるという自覚はまったく持っていなかった。


振り返って、自分がアイドルに「ハマった」日として印象に残っているのは20歳の誕生日。

20歳の誕生日だというのにインフルエンザに直撃され、治りかけで外出もできず暇を持て余した自分は、数日前に友人が参戦したというアイドリング!!!のライブ映像を見ながら、「ハマった」。

何を見てどう思って何がきっかけだったのかはあまり覚えていないけれど、振り返ると、あの日のPC画面の前が、自分がアイドルに「ハマった」瞬間だったんだろうなーと思う。


その日以降、アイドリング!!!をきっかけにアイドルファンになった自分は、そこから始まるアイドル戦国時代の乱世をDDとして駆け抜け、アイドリング!!!が解散した今もヲタクをやっている。

 

ただ好きなものを好きなように見続けてきただけで特に何も成し遂げていないというのに「丸9年を終えて、10年目突入。長いようであっという間だった気もする。」とか大げさなモノローグを打ちたくなるレベルの充実した時間だった。

ヲタクになる前の自分がどう毎日を過ごしていたのかを思い出せないというわけではないけど、何か別の人物を見ているような気持ちで振り返ってしまう。

かといって自分が今こうなっていることに大きな違和感があるかというとそうでもなく、ヲタクになる前の自分から地続きで、なるべくしてこうなったという感覚もあったりする。

まだ9年しか経ってないのか、という驚きがある。


数少ない友達と遊んだ楽しい時間と、数々の楽しかったライブの時間だけが記憶の大事なところにあって、それ以外は全部テレビでCMでも見ているように早送りで楽しくも辛くもなかった気がする。

 

そして、そういうどうでもいい早送りの時間を別に辛くなかったと言えるのは、たぶん、紛れもなくアイドルのおかげだ。

 

ヲタク10年目。いつまでもヲタクをやめられそうにない。

 


「以上、ポエムでした。」

と、かなり上のほうで書いたけど嘘でした。

ここまでがポエムでした。